創立55周年記念特別鼎談

2021年、日本脚本家連盟は創立55周年を迎えました。連盟の広報委員会ではそれを記念して、鎌田敏夫理事長、古沢良太さん、山本むつみさんのお三方による鼎談を開催、金谷祐子常務理事の司会進行により、脚本家の仕事と著作権の過去、現在、未来について、大いに語っていただきました。その模様は同年6月発行の『脚本家ニュース』第694号に掲載しましたが、より多くの方に読んで頂きたく、ここに再掲いたします。

日本脚本家連盟広報委員長 古怒田健志(写真撮影共)

出席者

鎌田敏夫

鎌田敏夫  

日本脚本家連盟理事長。1967年「でっかい青春」でデビュー。主な作品にドラマ「俺たちの旅」、「金曜日の妻たちへ」、「男女七人夏物語」、「ニューヨーク恋物語」、「29歳のクリスマス」、「逃げる女」、「MAGI 天正遣欧少年使節」、映画「戦国自衛隊」「里見八犬伝」など多数。

山本むつみ

山本むつみ  

2003年の第31回創作ラジオドラマ脚本懸賞最優秀作受賞をきっかけに2004年「御宿かわせみ」でデビュー。主な作品にドラマ「ゲゲゲの女房」、大河ドラマ「八重の桜」、「コウノドリ」「Aではない君と」「小吉の女房」「病院の治しかた」など多数。2020年「第25回橋田賞」受賞。

古沢良太

古沢良太  

2002年テレビ朝日新人シナリオ大賞を受賞した「アシ!」が映像化されデビュー。主な作品にドラマ「ゴンゾウ 伝説の刑事」、「リーガル・ハイ」、「デート~恋とはどんなものかしら~」、「コンフィデンスマンJP」、映画「キサラギ」「探偵はBARにいる」「ミックス。」など多数。

金谷祐子

金谷祐子 司会

日本脚本家連盟常務理事。1986年第11回創作テレビドラマ脚本懸賞に入選した「月夜のうさぎ」が映像化されデビュー。主な作品に「ようこそ青春金物店」、「危険な関係」、「美しい罠」、「示談交渉人裏ファイル」「ザ・公証人」シリーズなど多数。

鼎談風景

大河ドラマ

金谷

本日はお忙しいなか、ありがとうございます。この顔合わせって、連盟ならではですよね。なかなかこのお三方に一堂に会していただけることって、他ではないと思うんですが。

鎌田

脚本家同士で集まろうって、なかなかないですよね。

金谷

実はたまたまですが、鎌田先生が2003年に『武蔵 MUSASHI』を大河でお書きになって、山本さんの『八重の桜』が2013年。そして再来年2023年が古沢さんの『どうする家康』。ちょうど十年ごとなんです。

古沢

すごい不安なんですよ、僕。

金谷

ここでヒントをいただいたほうがいいですよ、アドバイス。

鎌田

長いからね。

古沢

そうです。そんなにたくさん書けるのかなと思って。2年間ぐらいかけて書くことになってて、それでも計算していくと結構ぎりぎりですよね。皆さん、どういうふうにやってたんですか。

山本

何で家康を?

古沢

いや、単純に一番面白いと思っていたから。家康ならやってもいいんですけどとか言ったら、通っちゃったんですよね。

鎌田

それは、シンパシーがどっかであったわけでしょう。

古沢

そうですね、シンパシー。いまいち人気ないですよね、家康って。

鎌田

昔、高度成長期のときは人気あったけど。

古沢

そこも好きで。実はすごい波瀾万丈じゃないですか。だから、後の世が作った家康像じゃなくて、リアルタイムで生きてた彼の目線で書いてったら、すごく面白いだろうなと思ったんで。

鎌田

これこそ家康って、流れがあるじゃない。

古沢

そうですね。

鎌田

あんまり思い入れないのがいいんじゃない?

山本

通説は必ずしも真実ではないっていうのをやるのが、歴史ドラマを書く醍醐味だと思っていて。歴史をそのまま書いてるんじゃないかって誤解されることもあるけど、そんなことは全然ないんです。通説とされていることも、別の角度からいろいろ調べていくと、実は全然違っていたりしますしね。『八重の桜』の時は、例えば二本松少年隊は、小っちゃい子たちが自分では刀を抜けなくて、背中に差した刀を、向かい合ってお互いに抜き合っていたとか、自分の背より高い銃を持って戦場に行ったというような話がいっぱい埋もれていまして、そういうことを発掘するのも意義があるなと。

鎌田

シナハンが一番楽しいんですよ。

山本

シナハン行ってます?最近はできないことも多いですよね。

金谷

大河は、さすがにシナハンあるんじゃないですか?

古沢

まだ分からないです。『探偵はBARにいる』の時に、札幌のススキノに連れて行ってもらいましたけど、それが本当に役立ってるかどうかは、あんまり自分では分かんない。でも楽しかったので役立ってるってことにしてるんですけど。

山本

シナハンで終わったら最高かもしれないですね。あれ、一番楽しいと思います。

鎌田

シナハンで終わったら、こんないい商売はない(笑)。

山本

『八重の桜』で資料を調べていた時、「小田山の上からお城に大砲を打ち込んだ」っていう記述があって、それ、実感として湧かなかったんです。それでシナハンに行った時に、小田山に登ってお城を見たら、ああ、この距離か。この距離感で大砲を一日に2千発も打ち込まれるのかっていうのがすごくよく分かって。『ブラタモリ』じゃないけど、会津は盆地であるとかそういう地勢的なものは、人間にすごく影響してると思う。

古沢

個人的なこと、聞いていいですかね。

金谷

もちろん、どうぞ。

古沢

ちょうど今、キャスティングを相談されてるんですけど、まだ内容も何も自分の中で固まってないのに、もうキャストは決めていかなきゃいけないって言われて。キャスティングに関しては、正直いうと僕はあんまり興味がないんですよ。

鎌田

そうなの。

古沢

勝手に決めてほしいんですよ、でもそれも困るなあとも思うし。皆さんは、割とキャスティングには意見を言うほうですか。

山本

私は聞かれれば言う感じですけど。私の場合、キャストが決まっていて当て書きするほうが、書くの楽なんですよね。

古沢

僕はこの人どうですかって訊かれると、みんないいと思っちゃう。いいですねぇって。

鎌田

それは素晴らしい(笑)。

古沢

でも、あんまりイメージぴったり過ぎると、ちょっと嫌っていうのはあって。やっぱり違う何かを持ち込んでくれる人がいいなっていう感覚は、あるんですけど。